Cisco Systems社認定資格であるCCNA(Cisco Certified Network Associate)出題範囲における技術について、定期的にご紹介します。
CCNA資格は【ICND1】【ICND2】の2つの試験に合格することで取得できます。今回はICND2の出題範囲であるマルチエリアOSPFについてご紹介します。
OSPFエリアの概念
OSPFでは、エリア内で詳細な情報がLSAによって交換されます。 ルータの数が増えるとLSAが多く発生することになり、LSDB(リンクステートデータベース)からルーティングテーブルの計算が頻繁に発生し、ルータのCPUに負荷をかけてしまうことになります。
そこで、エリアを分割することによって、詳細なLSAの交換をエリア内に抑え、エリア間では要約したLSA情報を交換することによって、ルータへの負荷を軽減することが可能になります。
OSPFには、以下の種類のエリアとルータタイプがあります。
- エリアの種類
- バックボーンエリア(エリア0)
- 標準エリア
- スタブエリア
- トータリースタブエリア
- NSSA(Not-So-Stubby Area)
- ルータタイプ
- 内部ルータ
- ABR(Area Border Router)
- ASBR(Autonomous System Boundary Router
LSAタイプ
ディスタンスベクタ型のルーティングプロトコルは経路情報そのものを交換しますが、OSPFではLSAを交換します。
LSAには、そのルータに接続されたネットワークの情報やインタフェースのコストなどの情報が含まれており、各ルータはこのLSAをアナウンス及び受信し、各ルータがリンクステートデータベース(LSDB)を作成します。また、このLSAは定期的にアナウンスするのではなく、更新があった場合のみその差分情報をアナウンスします。
LSAのタイプと交換
2台のOSPFルータがネイバーになると、自分のLSDBにあるLSAのリスト情報を、DBD(Database Description:データベース記述)メッセージを使用して交換し、お互いに学習していないLSAのリストを認識します。 OSPFルータがLSAの交換を行うまでの状態遷移は、次のようになっています。
- ネイバーステートをLoadingステートに移行させます。
- 2台のネイバーは、自分が持っていないLSAの情報を補完するためにLSR(Link State Request)メッセージを送信します。
- LSRを受け取ったネイバーは、要求されたLSAの情報が記述されているLSU(Link State Update)メッセージで応答します。
- LSUを受信したネイバーは、LSAck(Link State Acknowledgement)メッセージで確認応答を行います。
バックボーンエリア
バックボーンエリアは、複数のエリアを接続するエリアで、エリア番号は「エリア0」を使用し、OSPFでは必須のエリアとなります。 バックボーンエリアでは、全タイプのLSAを扱うことが可能です。
標準エリア
標準エリアは通常のエリアで、ノーマルエリアともよばれ、全タイプのLSAを扱うことが可能です。
また、標準エリア内のルータは、外部ルートをタイプ5LSAとして再配布が可能です。
スタブエリア
バックボーンエリアとスタブエリアを接続するABRは、他のエリアの情報をタイプ3LSAで再配布します。
OSPF以外の外部ネットワークの情報については、デフォルトルート(0.0.0.0/0)としてエリアにフラッディングします。 そのため、スタブエリア内に外部ルートを再配布することはできません。
トータリースタブエリア
トータリースタブエリアはCisco独自仕様のエリアで、自エリア以外の情報は全てABRがデフォルトルート(0.0.0.0/0)に変換してエリアにフラッディングします。
トータリースタブエリア内に外部ルートを再配布することはできません。 他のOSPFエリアの情報も再配布しないことが、スタブエリアと異なるところです。
NSSA (Not-So-Stubby・Area)
◆NSSA
NSSAは、スタブエリア内にASBRが存在することができ、外部エリアの情報をタイプ7LSAとしてエリア内にフラッディングが可能。
タイプ7LSAを、NSSAのABRがタイプ5とタイプ4LSAとしてエリア0へフラッディングします。
タイプ5LSAはデフォルトルート(0.0.0.0/0)としてエリアへフラッディングします。
◆トータリー(完全)NSSA
トータリーSNSSAは、トータリースタブエリア内にASBRが存在することができ、ABR上での「nssa no-summary」設定にて、OSPFの他エリア情報もデフォルトルート(0.0.0.0/0)として通知が可能になります。
マルチエリアOSPFの設定
マルチエリアOSPFとして構成するには、次のような手順で行います。
- router ospfコマンドでOSPFプロセスを有効にする。 ここで設定するprocess-idは、ルータ内でOSPFプロセスを識別するための値で、任意の数字(1~65,535)が入ります。
この数値はあくまでも「ルータ内」で使用される値なので、他のルータのOSPFプロセスIDと一致していなくてもかまいません。 - ルータコンフィグレーションモードに移行したら、OSPFを有効にするインタフェース(ネットワーク)を指定する。
ip-addressとwildcard-mask(ワイルドカードマスク)の組み合わせで、インタフェース(ネットワーク)を指定します。
また、area-id(エリアID)は所属するエリアの番号を指定します。
また、エリアごとにタイプの設定を行う場合は、該当するエリア番号に続けてタイプの指定を行います。
- stub スタブエリアを設定
- stub no-summary (ABRのみ) トータリースタブエリアを設定
- nssa NSSAを設定
- nssa no-summary (ABRのみ) 完全NSSAを設定
いかがでしたでしょうか。ぜひお勉強の際にお役立て下さい。