公共職業訓練は、再就職・スキルアップに向けた公的支援
公共職業訓練 とは、失業者や求職者、転職希望者が新たなスキルを習得し、再就職やキャリアアップを目指すための公的な支援制度です。公共職業訓練には、離職者向けや在職者向け、学卒者向けなどがあり、そのうち離職者向けの訓練は、ハローワークが関連して主催しており、就職に役立つ知識やスキルを原則無料で習得できます。公的職業訓練は「ハロートレーニング」とも呼ばれています。
離職者向け訓練は、国や都道府県が主体となって実施する施設内訓練と、都道府県が民間の教育訓練機関などに委託して実施する委託訓練があります。受講費用は基本的に無料ですが、公共職業訓練のうち、在職者向け訓練と学卒者向け訓練については有料となります。また、無料の訓練の場合でも、テキスト代や作業服、工具代、保険料などの実費は自己負担が必要です。
離職者向けの訓練は、主に雇用保険を受給できる方向けです。ただし、雇用保険を受給できない方で、一定の収入・資産要件などを満たす場合に、訓練期間中、月額10万円の職業訓練受講給付金などが支給される場合があります。雇用保険の受給や、受講給付金の支給により、経済的な不安を抱える方々が安心して職業スキルや知識を習得できるよう設計されています。
公共職業訓練の目的と特徴
公共職業訓練の主な目的は、就職に必要な技能および知識を習得することです。就職に役立つ知識や技能を身につけ、実践的な講座を通してマスターすることができ、再就職やキャリアアップを目指す求職者を支援しています。
特徴として、以下の点が挙げられます。
無料または低額で受講可能
ハロートレーニングの離職者訓練と求職者支援訓練は受講料は原則無料で、テキスト代などの実費は自己負担となります。ただし、前述のように、公共訓練の中には有料の訓練もあります。
多様なコース内容
さまざまな分野の職業訓練が開講されています。施設内訓練では主にものづくり分野の高度な訓練として、金属加工科や住環境計画科など、地域の実情に応じた多様な訓練として、木工科や自動車整備科等があります。委託訓練ではOA事務科、経理事務科といったオフィスワーク系、介護、情報、医療・福祉、事務など多様な職種に対応した幅広い分野が提供されています。
実務に直結した内容
就職に有利な知識や技能が身につくように、仕事に必要な知識や技能を実践的な講座を通してマスターできます。
求職者支援訓練との違い
公的職業訓練には「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。この二つは、対象者に大きな違いがあります。
公共職業訓練は、主に雇用保険受給者が対象で、比較的長期間のコースもあり、広範なスキル習得や長期的なキャリア形成を目指す側面があります。一方、求職者支援訓練は雇用保険を受給できない求職者向けで、再就職に必要なスキル習得を目指します。
求職者支援訓練と公共職業訓練の比較表
項目 | 公共職業訓練 | 求職者支援訓練 |
---|---|---|
実施機関 | 国・都道府県のほか、都道府県からの委託により民間教育訓練機関等が実施 | 訓練コースごとに厚生労働大臣が認定し、民間教育訓練機関等が実施 |
対象者 | ・離職者訓練:主に雇用保険を受給している求職者の方 ・在職者訓練:主に中小企業に在職している方 ・学卒者訓練:中学・高校卒業者 など |
失業中で主に雇用保険を受給できない方(受給が終わった方も含む) |
訓練内容 | 幅広い職業訓練 ・主にものづくり分野の高度な訓練 ・地域の実情に応じた多様な訓練 ・モデルカリキュラムなどによる訓練 |
実務的なスキル ・社会人としての基礎的能力を習得する訓練 ・基礎的能力から実践的能力まで一括して習得する訓練 |
主な給付金 | 雇用保険の受給資格がある場合で、一定の要件を満たす場合、雇用保険の基本手当の他、受講手当、通所手当が支給される | 一定の要件を満たす場合、職業訓練受講給付金(受講手当・通所手当など)が支給される |
訓練費用 | 原則無料(テキスト代等除く)または低価格で提供される | 原則無料(テキスト代等除く) |
それぞれの特徴について解説します。
公共職業訓練(離職者訓練)は、主に失業保険(雇用保険の基本手当)受給資格者を対象とした訓練講座です。
失業保険を受け取りながら講座を受講することが可能です。自己都合で退職した場合でも、職業訓練の受講が開始されると、通常必要な失業手当受給までの待機期間が解除される場合があります。
また、雇用保険を受給している期間に職業訓練を受けると、訓練が終了するまで失業手当の受給期間が延長される場合もあります。どちらも一定の要件を満たす必要があります。
求職者支援訓練は、公共職業訓練が失業保険受給者を主な対象としているのに対し、失業保険を受給できない方を主な対象とした職業訓練です。
具体的には、ハローワークに登録して仕事を探している人のうち、失業手当をもらう資格がなかったり、手当がもらえる期間が終わってしまって失業保険を受給しておらず、かつ働く意思がある人が主な対象です。
どちらの場合も、ハローワークや訓練実施機関が積極的に就職支援を行います。また、一定の要件を満たす方に、訓練受講中の生活を支援する雇用保険の各種手当や職業訓練受講給付金などを支給します。
支援内容と学べるスキル
公共職業訓練では、訓練中に安心して学べるよう、就職活動のサポートも提供されています。主な支援内容は下記の2点になります。
就職活動支援
訓練と並行して行う求職活動について、ハローワークや訓練実施機関の支援を受けられます。雇用保険受給者が職業訓練を受講している期間は、認定日にハローワークに出向く手間が省けるメリットもあります。訓練校が手続きを代行してくれます。
ただし、職業訓練受講給付金を受給している受講者は、指定日にハローワークで手続きを行う必要があります。
キャリアアップ支援
職業訓練で習得した知識や技能は、その後の就職活動において応募書類に書き足す項目となり、選考で以前より有利な位置に立つことが期待できます。訓練校の講師や受講生との繋がりから就職先を紹介してもらえるケースもあるようです。
学べるスキルは多岐にわたります。コース例として、
IT関連
ウェブクリエーター、プログラマー、エンジニア、情報通信、機械CAD。
事務職
OA事務、経理事務、営業事務、総務・オフィス実務、医療・調剤事務、ビジネスパソコン基礎。
福祉・介護
介護初任者研修・実務者研修、介護福祉士養成、保育士養成、介護実務。
技術系
生産システム技術、テクニカルオペレーション、金属加工、木工、電気設備、自動車整備、溶接、モノづくり。
ご自身のキャリアプランや興味に合わせ、最適なコースを選ぶことが重要です。訓練校によって講座の質にばらつきがある場合もあるため、説明会や見学会などを活用して、自身に合った訓練校かどうかを見極めることが大切です。
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公共職業訓練(離職者訓練)への申し込みの流れ
職業訓練を受講したい場合、「ハローワーク(公共職業安定所)」に申し込みに行く必要があります。これは、職業訓練そのものが「仕事を探している求職者を対象にしているため」です。原則として、住所地を管轄するハローワークで申し込みを行います。
申し込みの流れは以下の通りです。
- ハローワークのインターネットサービスなどで訓練コースを検索したり、ハローワークの窓口で相談したりして情報収集を行い、興味のある職業訓練プログラムを見つける。
- ハローワークで職業相談・申し込み: お近くのハローワークの職業相談窓口で申し込み手続きを行います。なお、申込みに関しては、ハローワークにて複数回の職業相談を行う必要があります。職業相談を通じて、①訓練を受講することが適職に就くために必要であると認められ、かつ、②訓練を受けるために必要な能力等を有するとハローワークが判断した方が対象となります。
- 訓練校による選考試験(筆記試験や面接など)があります。訓練には定員があり、高倍率になるコースもあります。希望者全員が受講できる状況ではないこともあります。
- 後日、合否通知が届きます。
- 合格後、ハローワークにおいて受講あっせんを受け、訓練に参加することができます。
※公共職業訓練の注意点
注意点として、申し込みから受講開始までは選考などがあるため、数ヶ月ほどの時間がかかってしまう場合があります。
すぐにスキルを身につけたい人にとっては、もどかしく感じる可能性があるでしょう。また、ハローワークの職業訓練は、タイミングによってはすぐ申し込めるわけではない点にも注意が必要です。
必要書類と準備物
公共職業訓練(離職者訓練)の受講申し込みに必要な書類は下記の通りです。
- 入学願書
- 顔写真(3.5㎝×3㎝・1枚)
- 雇用保険受給資格者証(失業保険をもらいながら受講する場合のみ)
筆記用具やメモ帳、履歴書、職務経歴書などもハローワークの窓口でスムーズに手続きを進めるために役立ちます。
まとめ
この記事では、再就職やスキルアップを目指す方々を支援する公共職業訓練について解説しました。公共職業訓練(離職者訓練)は、ハローワークが関連して提供する公的な制度で、失業者や求職者が仕事に必要なスキルや知識を原則無料で習得できるものです。
この制度の大きな特徴は、雇用保険受給者を主な対象としており、雇用保険受給中で、一定の要件を満たし、ハローワークが訓練の受講を指示した方は、訓練期間中も雇用保険の基本手当などを受け取れる場合があることです。自己都合退職の場合でも、訓練受講によって待機期間が解除されたり、受給期間が延長されたりするメリットがあります。
公共職業訓練(離職者訓練)では、IT関連、事務職、福祉・介護、技術系など、多岐にわたる分野のスキルを習得できます。実践的なカリキュラムを通じて、就職に直結する知識や技能を身につけられるのが魅力です。申し込みはハローワークを通じて行い、選考試験があるため、事前の情報収集や準備が重要となります。
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